ずばあん物語集

ずばあんです。作品の感想や悩みの解決法などを書きます。

地方にテレビ局が少ないのはなぜ?

こんにちは、ずばあんです。

 

早速ですが、大都市圏とそれ以外の地域では見れる(地上波デジタル)テレビのチャンネルの数が異なることは常識となっております。

 

「うちの地域はテレビ東京見れないからね」とか「自分の所ではガキ使の特番やってないからね」という会話は珍しいものではありません。

 

私もこれは単純に地方と大都市圏との経済力が大きく異なるからと考えておりました。事実、放送局の経営に関わる広告収入と地域のマーケットの大きさには相関があるからです。

ところが、この事情について調べてみますと、その状況を生み出した事情と矛盾が明らかになりました。そして、その解決策についても密かに立てられていることも分かりました。

今回は皆様にそれらを紹介いたします。

 

 

【テレビ局の数と情報の多様性】

 

 

地方のテレビ局が大都市圏のテレビ局に比べ数が少ないのは、直接的には放送免許を与える総務省が地方に新たに開局枠を設けないからです。

 

日本のテレビ局は開局に辺り総務省の認可を必要としますが、その認可は国のチャンネルプランに基づいた開局枠から下りています。開局枠はその放送対象地域の人口や経済規模などの要素から放送局数を決定し設定されます。つまり放送局の数は地域の経済力に比例するのです。

一見して納得のいく理由に思えますが、ここである可能性を考えられます。それはひとつの会社が沢山テレビ局を運営することです。

普通の会社を見れば分かりますが、全国津々浦々に支社を設置している企業は沢山あります。テレビ局も各地に支社をつくり、各地でテレビ放送を行えば地方の経済力に関係なく放送を行えます。そして地方でも沢山のチャンネルを視聴できます。

 

実はこの事は総務省、そしてその前身の郵政省も気付いておりました。しかし、それを許さなかったのはある理由からでした。それはマスメディア集中排除原則です。

 

マスメディア集中排除原則とは、特定の会社(新聞社・テレビ局・ラジオ局等)が複数の放送局をある程度以上支配することを禁止する原則です。

この原則ではある放送局の株式の総発行数の1/10以上を特定の会社が保有するときに、その会社は別の放送局の総発行株式数を一定割合以上(ある放送局と同じ地域の放送局ならば1/10以上、別の地域の放送局ならば1/3以上)保有することは違法となります。この原則は総務省令「基幹放送の業務に係る表現の自由享有基準に関する省令」に定められた原則であり、この省令は放送法に準拠しています。

 

この原則が設けられている理由は、「情報の多様性」の確保のためです。

日本のテレビ放送を規制している放送法の理念のひとつに「情報の多様性」があります。これは単に沢山のチャンネルを見れることではなく、それぞれのチャンネルが異なる情報を視聴者に提供することを期待するものです。つまり放送局ごとの個性を明確にしようという試みなのです。そしてその分かりやすい指標が各テレビ局の資本、すなわち株主構成の多様性でした。

 

日本ではテレビ局の筆頭株主に新聞社や他のテレビ局がついていることが珍しくありません。これはメディア会社が他のメディアを支配している実情を表しております。通常、保有株式の数は会社に対する発言権の大きさそのものなので、テレビ局の筆頭株主である新聞社の意向はテレビ局のスタンスをほぼ決定します。

日本でテレビビジネスが興った昭和30年代は特にこの傾向が顕著で、大都市のテレビ局は全国紙が、地方のテレビ局(ラジオ局を兼業していることが多かった)は地方紙が筆頭株主・有力株主である例がほとんどでした。これは膨大な資金力とメディア経営の豊富なノウハウが新聞社の圧倒的な強みだったからです。

この時期はテレビ局の更なる開局が期待された時期でありましたが、新たなテレビ局もこれまでのように新聞社により支配されることは容易に予想されました。これは情報の多様性の危機でもありました。圧倒的に強大な資本力を持つ新聞社が同じ地域の複数の放送局の相当な割合の株式を持てば、同じ地域に同じ内容の情報を流すテレビ局が増えるだけとなります。

この事態を防ぐために先程の原則(1950年代当時は局長通達、1988年に省令化)が作られ、テレビ放送の情報の多様性が確保されることになったのです。

 

しかし、この原則は新たなテレビ局の開局に制約をかけることとなりました。原則にのっとれば、一つの有力企業が複数の放送局の大株主になることは不可能なので、テレビ局の株主を地元で沢山募るしか開局の道はありません。

そうなると各地域の経済力がテレビの開局の制約となり、開局後も放送圏内の広告市場の大きさが経営上の制約になります。そのため経済的に強みのある大都市圏程テレビチャンネル数は多くなり、比較的弱い地方部ではチャンネル数は少なくなります。

 

したがって、テレビ情報の多様性とテレビ局の数の多さはお互いに拮抗する課題であると言えます。

1つの会社が多くのテレビ局を運営すればテレビ局の数を増やすことは可能です。しかし、それは日本のテレビメディア全体を牛耳る1つの資本による独占状態を招くおそれがあります。そうなれば情報の多様性が損なわれることとなるでしょう。

 

一方で情報の多様性の保護のための規制が機能しているかという疑念もあります。先程申し上げた通り、この規制が地方のテレビ局の数の少なさを招きむしろ情報の多様性を狭めているという側面もあります。隣接する地域からの放送を視聴できればいいですが、あくまでそれは非公式のものであり、制度の外の偶然の産物に過ぎません。

それに資本比率で情報の多様性を計る方法にも限界があります。新聞社の中には地域内のテレビ局の筆頭株主ではないものの、報道部門などで業務提携を行う例が多く存在します。中には同様の業務提携を地域内の複数局で行う例もあります。そのため実質上の情報の多様性は株主構成とは異なる様相を見せる可能性が高いです。

 

 

【地方にテレビ局は必要なのか】

 

 

さて、地方にテレビ局が少ないことでどのようなデメリットがあるのでしょうか。

 

そのデメリットは大きく分けて3つあります。

 

1つは見れる全国ネットの番組が少なくなることです。

日本の民放テレビの全国ネットワークは5つ存在します。この5つとはTBS系列(28局)、日本テレビ系列(30局)、フジテレビ系列(28局)、テレビ朝日系列(26局)、テレビ東京系列(6局)です。これらを全部視聴するには同じ地域に5局は少なくとも必要です。この5系列を全て揃っている地域は首都圏と愛知県、大阪府、岡山・香川県、福岡県、北海道の6地域のみです(ネットワークに属していない「独立局」でテレビ東京系列の番組を多く放送している局のある地域を含めるともっと多くなります。)。

この他の地域では4局以下の地域が多くなります。なかでも福井県と宮崎県では2局、そして佐賀県徳島県は1局になります。

もっぱら5系列に対してテレビ局数が少なくなる分見れる番組数は少なくなります。ここで1つのテレビ局のプログラムは、複数のネットワークと契約を結びクロスネット体制をとるなり、番組販売制度で番組を購入するなりして結果的に複数のネットワークの番組を放送することになります。

宮崎県では民放テレビ局は2局存在しますが、この地域のテレビ局UMKテレビ宮崎は3つの系列に属しておりこれは現在日本で最多のネットワーク加盟数です。3つの系列を1つのチャンネルで放送するため、それぞれの系列の全番組から取捨選択しながら番組を放送することになります。日本テレビ系列にも加盟していることから、あの「24時間テレビ」も放送しますが、普段他の系列の番組を放送する時間は「24時間TV」を中断しそちらを放送します。今から30年以上前は宮崎県のように民放テレビ局が少ない地域はもっと多く存在し、テレビ東京系列以外の4系列を見れる地域ですら概ね人口200万人以上の地域に限られておりました。

このようにテレビ局の数の少なさは番組の数という面で物理的に情報格差を生じさせます。地方と大都市の間の地理的な差異が、格差を生じさせる結果となるのです。

この問題を政府は長年認識しており、1986年には「全国民放4局化構想」を発表し、全てのネットワークを全ての都道府県で視聴出来るようにするプランを立てました。このプランにより1990年代までに数十のテレビ局が新設されました。特に専属系列局の少なかったテレビ朝日はそれを元の12局から最終的に24局へと倍増させました。

しかしこの構想はバブル崩壊や人口減少などにより放送局の経営悪化が見込まれ、途中まで進行して終わり、中途半端なまま現在に至っております。

一方で、全ての地域が等しくこのデメリットを被っている訳ではありません。佐賀県では地元テレビ局はフジテレビ系列のサガテレビ1局のみですが、実際には隣県の福岡県の民放5局の放送が佐賀県の大部分で視聴できます。そのためサガテレビはフジテレビ系列の番組のネットとローカル番組の放送ににほぼ専念しております。徳島県でも地元局は日本テレビ系列の四国放送1局ですが海を挟んだ大阪府など関西地方からの放送を視聴できます。それらの県では実際に視聴できる系列は地元テレビ局の数より多くなります。

 

2つ目のデメリットは地域の情報発信拠点が少なくなることです。

各地域のテレビ局は全国ネットの番組のほかその地域内のみのローカル番組も放送します。ローカル番組の主な内容は、天気予報、ニュース、生活情報などです。番組ではありませんが、CMも含めればローカルCMも地域内放送の重要な内容になります。このため各地域のテレビ局はその地域の情報発信拠点となるのです。

特に災害時にはこれは重要な役割を果たします。日本では近年大雨や地震などの災害が多発しており、その度に迅速な情報提供がテレビで行われています。テレビは速報性や共時性に長けているメディアですのでその役目が期待されております。地震の時の「緊急地震速報」はその一つですし、大雨や台風のときの情報もそれに含まれております。

それが少ないということは地域内での情報密度が小さくなるということにも繋がりますし、地域社会のまとまりや生活にも影響を与えることにもなります。

さて日本のテレビ局にはどこのネットワークにも所属していない「独立局」という放送局がありますが、この独立局は地域の情報発信拠点に特化して作られた放送局です。この独立局は全て関東、東海、近畿といった広域放送(複数の都府県にまたがり行われる放送)が行われる地域に存在しております。これらの地域の広域放送局は放送対象地域よりも更に細かい都府県の情報の発信は手薄になります。そのため広域放送局とは異なり都府県単位のローカル放送に特化したテレビ局が作られたのです。兵庫県サンテレビジョンや東京都のTOKYO MXテレビなどがこれに入ります。

ちなみに、日本には地元民放テレビ局がゼロの県が一つだけ存在します。それは茨城県です。茨城県は関東広域放送圏に入り、いわゆる東京キー局を全部視聴できますが、県内の情報を発信する民間テレビ放送局は存在しません。NHK水戸放送局は県域放送を行っていますが、開始したのは2011年7月でそれまでは行っていませんでした。そのため茨城県では県内の他都市や他地区の情報が分からないという状況が続いていました。

 

3つ目のデメリットは自分の地域から他の地域に対する情報発信力が欠如することです。自分の地方の情報を全国ネットを通じて他の地方に発信することは地域の情報発信力に含まれます。全国ネットのニュース番組やワイドショーは製作しているのはキー局等ですが、その情報ソースは各地方のテレビ局から集めております。全国ニュースで福岡県内の情報を流すときはその取材・配給は福岡県のテレビ局が行います。

かつて日本テレビ系列で放送された情報番組「ズームイン!!朝!」はその代表例で、東京と全国の地方局で中継を繋ぎ、各地から生の情報をリアルタイムで放送しておりました。放送開始当初は画期的な試みで、他の放送局もこれに追随する現象が起きました。

よって地方のローカル局の存在は全国レベルでの情報発信の力の大きさに関わります。ネットワークに加盟している放送局の存在は特に重要です。先程申し上げました広域放送圏に入っている地域では、その放送局が立地している都府県以外の府県は独立局があるのみです。独立局は全国に情報を発信する機能はありませんので、独立局だけしかない府県の情報は全国に知れ渡りにくいという課題があります。先程申し上げた茨城県は独立局も存在しておりませんので、全国的な視点によると情報が手薄になりやすい状況になります。東日本大震災の時はそれらの地域の被害状況の報道は手薄となり、福島などの地域に比べて復興支援の確保に困難を極めたという意見もありました。

 

このように地方のテレビ局が少ないことにより、(1)見れる全国ネットの番組が少なく大都市圏などとの情報格差が生まれ(2)地域の情報発信拠点が少なくなり地域内の情報共有の度合いが小さくなり(3)全国への情報発信源が少なくなり全国での地域の情報の認知度に支障が出る、という弊害が生まれるのです。

 

 

【地方のテレビ局を増やす工夫】

 

 

このような環境の元で政府やテレビ業界がこの問題を見て見ぬふりしてた訳ではありません。両者はこの問題を試行錯誤しながら解決してきました。その先駆的な試みをいくつか紹介します。

 

(1)放送対象地域の統合

 

現在島根県鳥取県は2県で同じ放送対象地域に入り、両県は同じ民放チャンネル3局を共有しています。これは通常1県で1つの放送対象地域とするのに対して異例です。

かつてこの2県は他地域と同じようにそれぞれの県で放送対象地域が別れておりましたが、1972年に両県の放送対象地域が統合され今の形になりました。

その理由は、当時両県の人口はそれぞれ70万人、60万人と共に日本最小レベルで域内市場の小ささ故に将来テレビビジネスがそれぞれの県で発達する可能性は望めなかったからです。当時既に島根県には2局、鳥取県には1局民放テレビ局が存在していましたが、ここから放送局が増える望みは小さいものでした。むしろ、放送局が経営難に陥る可能性の方が高かったのです。放送対象地域の統合直後は地域内のテレビ局は3局となり、域内人口は約130万人でした。これは今の大分県とほぼ同じ状況です。そのため当時の政府は放送対象地域の統合を実行したのです。

 

これと似たような例で、岡山県香川県は1979年に両県の放送対象地域が統合されることになりました。これは両県が瀬戸内海を挟んで正対し、電波を遮るものがないため元からお互いに相手の県の放送を見ることが出来たからです。その実情から、岡山県香川県は同じ放送対象地域に含まれるのが合理的であると判断されたのです。現在岡山県には民放テレビ局が3局、香川県には2局あり、両県で5局見ることが出来ます。5系列全て視聴することが出来ます。

 

(2) テレビ局間業務提携

 

次に沖縄県の例ですが、1995年に沖縄県の民放テレビ第3局(かつ最後発)のQAB琉球朝日放送が開局しました。この放送局が特別なのは、この放送局の本社が他局のRBC琉球放送の本社ビルの中に同居していることです。しかもただ入居しているだけではなく、スタジオや放送機材などの設備もRBC共用しており、業務の多くはRBC提携しております放送法の兼ね合いから報道部門などは独立しておりますが、ほとんど同じテレビ局のようなものです。

このような変わった経営の仕方をするのは、沖縄の地場資本の小ささ故でした。沖縄は本土から大きく離れた小さな離島であり重工業などの第二次産業を誘致できないのと、沖縄本島などにアメリカ軍が駐留しており開発に制約を掛けられている点から、経済発展が未発達な地域となっていました。その状況は沖縄の日本への返還後ますます強くなりました。

それ故に一から新たなテレビ局を開局するために資本を集めるのは困難な状況でした。QAB開局以前にも沖縄には「南西放送」の開局構想がありました。これは日本テレビが多大な支援をして開局する予定でしたが、日本テレビの社内政策の変更により南西放送の構想と資本から撤退しました。結果、南西放送設立に参加した地元資本だけでは開局のための資金が足らず、この構想は頓挫しました。

この後に起こったのがこのQAB開局構想でした。この構想を主導したのはテレビ朝日でしたが、テレビ朝日RBCと関わりがあり、それによりRBCもQAB開局に関わりました。ここでRBC南西放送構想破綻の教訓から自社内に新たな放送局を開局し、新局の資本を小さくすることを提案しました。これはテレビ朝日や政府との協議の末に実現し今に至りました。このような経営形態は沖縄経済のパイの小ささという制約の中で、沖縄の新しいテレビ局への期待を実現するための工夫でした。

 

この沖縄の例に近いのが、鹿児島のKKB鹿児島放送です。こちらは1982年に開局しましたが、その際に同じ地域の放送局・MBC南日本放送から人員派遣を受けたり、中継所を共用したり業務面で厚い協力関係を築きました。MBCはKKBの主要株主の一つですが、株式以上の密な関係があったのです。

 

この(1)(2)の例は古い例でございましたが、近年においても放送局の経営や新設に関わる新たな取り組みが行われております。

 

 

【今、そして将来どうなるか】

 

 

近年行われている新たな取り組みは、放送持株会社の認可と、マスメディア集中排除原則の緩和、そしてテレビ放送における法規制のチャンネル単位の規制からレイヤー単位の規制への転換です。

 

(1)放送持株会社の認可

 

放送持株会社とは、放送局がその傘下に入ることを目的とした持株会社のことです。ちなみに持株会社とは他の複数の企業の株を保有し資本面で支配するための会社です。一般的に出資比率50%以上の場合子会社として認められます。

これにより各テレビ局は放送持株会社の支配を受けつつ、財政面で手厚いサポートを受けながら安定した経営が出来るようになりました。法律では最大12局が同じ放送持株会社の傘下に入ることが出来ます(ただし各局が別々の地域に所在する必要があります)。

日本では放送法の改正により2008年に放送持株会社が認可され、フジテレビホールディングスなどが放送持株会社として設立されました。フジテレビHDの場合、傘下にフジテレビジョンとBSフジ、ラジオ局のニッポン放送宮城県の地方テレビ局・仙台放送があります。大阪の朝日放送ホールディングスの場合、旧・ABC朝日放送の放送の内ラジオ部門を朝日放送ラジオに、テレビ部門を朝日放送テレビに分社化した上でこの2社を傘下に支配しています。

このように放送持株会社は、それぞれ異なる放送局を強力なグループとして傘下においたり、元は1つの放送局の事業を分割した上で持株会社を含めてそれぞれの役割に特化した集団をまとめるなどして機能しております。

 

この放送持株会社は、2011年の地上波デジタルテレビ放送の開始に伴う莫大な投資に地方のテレビ局の財政が悪化する可能性を見越して認可されたものでした。

そして地デジへ完全に移行した現在は、人口減少やマルチメディア化などによるテレビ局の経営の悪化に関心が移行しております。全国的にこの放送持株会社が地方局の株式に対する持ち合い比率を上げ、筆頭株主になる例が多くなってきました。特に東京キー局や新聞社の持株会社がこの傾向を強めております。これは地方局側の経営の安定化という思惑と、キー局や新聞社の自社系列やグループの一体的支配の拡大・強化という思惑が一致したものと言えます。

 

(2)マスメディア集中排除原則の緩和

 

2011年には総務省がこれまでのマスメディア集中排除原則の基準を省令改正の元で緩和しました。ここでは複数の放送局に出資する会社は2局目以降は出資比率を、異なる1地域の1局のみならば、従来は20%が上限だったものを、3分の1(33.33・・・%)を上限として出資することが可能となりました。

この改正は当時全体的に悪化しつつあった日本の放送局の財政の安定化を図って作られました。この緩和により日本のどの会社も、放送持株会社でなくとも、それぞれの地域で1局ずつならば、テレビ局の株式の最大3分の1までの株式を保有することが出来ます。

このため持株会社を持たない新聞社や放送局も近年複数のテレビ局に対する支配力を強めつつあります。例えば全国紙の朝日新聞社持株会社を持っていませんが、2020年現在6つのテレビ局において局の全株式の内の20%以上を保有しており、省令改正後に支配力を強めたことが分かります。この集中排除原則の緩和は、放送持株会社の認可とともに、複数の放送局を一社が支配する傾向を強めていることが分かります。

 

(3)チャンネルへの法規制から各段階への規制へ

 

ここで話は一旦反れますが、テレビはもう要らないという意見やテレビ局は無くてもよいという意見が昨今は起こっております。

その様な意見が出ることは自然なことです。現在インターネットによる動画配信はポピュラーな物となり、テレビ局や新聞社などもインターネットで配信する時代となっております。両者の間でコンテンツを共有することも当たり前になりました。

またケーブルテレビ局を見ると、インターネット通信とテレビメディアの融合は地上波以上に進んでおります。自社ケーブルによって、テレビ放送と共にインターネットサービスも提供しており、両者を合わせたサービスも幅広く行っております。

そのような中で、これまで通りの放送局のあり方は「古い」と考えられるようになりました。これまでのようにテレビ局が一貫して情報管理する時代は終わったのです。

 

この流れが日本のテレビ法制に影響を与えております。長年チャンネル自体に対して行われていた縦割りの放送規制が、2010年にテレビ放送の各段階に対する横割りの規制になりました。

それまでは放送業界や放送法制において、テレビ番組の企画から製作、放送は全て同じ放送局が行う前提でした。放送局に本放送免許が降りると、そのチャンネルは一企業であるその放送局が半永久的に占有することになりました。これはある種の利権であり、時にはその利権争いがし烈なものになることも珍しくありませんでした。

しかし、平成時代になるとインターネットが普及し始め、そのサービスも年々充実していきました。インターネット通信は最初はテレビ放送と独立しておりましたが、2000年代にはインターネットでテレビコンテンツを扱ったり、テレビ事業者がインターネットサービスを提供するなど両者の壁は徐々に融解していきました。

その中でこれまでの縦割り放送規制では法律の数も増え処理が複雑になり、現実の通信・放送事業に対応し難くなりました。そのため政府は各レイヤー(段階)ごとの横割り放送規制に切り替えることにしたのです。

横割り放送規制では、放送コンテンツ、伝送サービス、伝送設備の3つのレイヤーごとに規制することになりました。放送コンテンツは放送法のもとに、伝送サービスは電気通信事業法のもとに、そして伝送設備は電波法と有線電気通信法のもとに規律されることとなりました。これにより放送と通信が融合した現在の社会に対応しました。

現在日本のテレビ局はネット配信サービスも行っております。ネットニュースに素材を提供したり、YouTubeの動画配信サービスに組み込まれたりもしております。また、YouTubeのチャンネルにこれまでのテレビ人材が大量に参入する現象も起きており、ネット内にテレビのノウハウが攻めてくるようになりました。Huluなどの動画配信サービスと協力して番組製作をすることもあります。もはやテレビ局かネットサービスかではなく、全ての情報はどこからでも発信されどこからでもアクセス出来るようになったのです。

こうなれば、これまでのテレビ局は必要無いと言われるのは当然の結論となります。番組を作る所、番組を組み立てプログラムを放送する所、放送設備を管理する所は全く別々でいいのですから。インターネットかテレビかにこだわる理由がもはや無いのです。

 

 

ここまで(1)(2)(3)を見てきましたが、これらからテレビ放送の事業拡大に関わる障壁が徐々に小さくなっていることが分かります。一社により複数の放送局の所有や経営を行う体制が整えられてきたことや、放送・通信事業にこれまで入れなかった事業者が参入することができるようになることから日本のテレビの可能性が決して狭くないことも分かります。

 

前章で見た前例からも分かる通り、地方のテレビ局の少なさを補う工夫はずっと行われてきました。今後地方と都市とのテレビの情報格差を補う策にもっと進展があるかもしれません。

 

 

【おしまいに】

 

 

また長い記事になりました。

 

この問題は私自身が経験したことでもあり、私の友人が痛感していることでもあります。

 

私は長崎県出身ですが、長崎県では民放テレビ局が4局存在し、テレビ東京系列の局はありません。地上波ではテレ東系列の番組は一部しか見ることが出来ませんでした。そのため大学進学で福岡に住み始めたときは、テレビ東京系列のTVQを見れることに感動した覚えがあります。

 

福岡で会った宮崎県出身の人は、宮崎県では民放が2局しか無いので「ガキ使」の年末特番を見れないと仰っていました。また、漫才トーナメント番組の「M-1」も生放送ではなく、後日録画放送するので結果が分かってから見ることになると仰っていました。

 

かつては長崎も民放2局の時代が長く続いており、自分の親世代の人には当時福岡や熊本など他県からのテレビ放送を見る人も少なからずいたとのことです。

 

この問題は昔から存在しておりその解決が長らく図られてきましたが、従来どおりのやり方では解決困難になってきました。その中で放送・情報ビジネスの大改革に伴い新たな青写真が描かれつつあります。

 

これからこの問題がどのように動くかはとても面白い見ものであると考えています。

 

それでは最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

 

2021年2月9日