ずばあん物語集

ずばあんです。作品の感想や悩みの解決法などを書きます。

風刺画家ベン・ギャリソン【Qアノンの見る世界】

こんにちは、ずばあんです。

 

本日はとあるまとめサイトからある絵を発見したのでそれを紹介します。

 


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(作:ベン・ギャリソン)

 

これはアメリカの風刺画家ベン・ギャリソン(1957-)の作品です。ギャリソン氏はQアノンを自称しており、保守派・トランプ氏支持を標榜しております。

 

このギャリソン氏の作品は政治風刺をQアノンの視点から行っており社会的な反響も大きくなっております。今回はこのギャリソン氏の風刺画を元にQアノンの世界観を見ていきたいと思います。

 

 

【誰を描いているのか?】

 


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さてこの風刺画ですが、登場人物がかなり沢山出てきます。人?だけではなく建物が沼に沈み、文字も沼の中に浮いております。

 

一番手前の陸地にいる男性はあのドナルド・トランプ氏であり、横にはバキュームカーが停まりタンクには「トランプ沼清掃サービス」と書かれております。

沼の中にいる大きな悪魔には「ディープステート」と書いてあり肩にも「CIA(中央情報局)」「NSA(国家安全保障局)」と書かれております。

この悪魔はトランプ氏に向かって「おい!貴様やっていることが分かってるのか?」と言い放ちます。

沼の中の生き物を見ると、魚に模したヒラリー・クリントン(民主党)とビル・クリントン(民主党)、ラクオバマ民主党)、ジョー・バイデン(民主党)が泳いでおります。亀に模したジョージ・ブッシュ(パパブッシュ・政治家)も一緒におります。

沼に浮かぶボートにはMSMと書かれ三匹のネズミが乗っております。MSMとは「メイン・ストリーム・メディア」の略称でTVや新聞、SNSといったアメリカ国民によく見られるマスメディアを指しております。

 

左を見るとピザや五芒星、複数人の幼児を持っているタコに模したジョン・ポデスタ(官僚)や、双頭の蛇に模したバーニー・サンダース(民主党)とカマラ・ハリス(民主党)がおります。枯れ木にはハゲタカに模したジョージ・ソロス(投資家)が止まっております。遥か遠くを見ると右の方にはビル・ゲイツ(元マイクロソフト社長)がワクチンを持っております。

 

一番奥には左手に沈みかけたFRB連邦準備銀行のビルと右手に沈みかけた国会議事堂が見えます。

 

沼には文字も浮いており、GoogleFBI(連邦捜査局)といった有名なものやCFR(外交問題評議会)、UN(国連)、ロスチャイルド家(ユダヤ系富豪)、ビルターバーグ会議(世界の有力者による非公開の国際会議)といった馴染みのない言葉も浮いております。 

 

 

【何を言おうとしているのか?】

 

 

登場人物については明らかになりましたが、作家のギャリソン氏はこれで何を描こうとしているのでしょうか。

 

まず沼の中にいる悪魔「ディープステート(DS)」はアメリカの政界に巣くっているとされる大規模児童売春などを斡旋している犯罪組織であるとされます。このディープステートはあくまでQアノンの間で語られる陰謀論です。

この悪魔は体にCIA、NSAと書かれていることから、DSにはアメリカ政府の有力な諜報機関が関わっているということを示しています。

 

悪魔DSが支配するこの沼には民主党の政治家や民主党政権下での官僚、ITで財を成した実業家などが生息(関与)しております。タコのポデスタが持っているのはQアノンがアメリカ民主党と関わりのあると考えているものを示しております。

 

数の子供は児童売春を表しており、民主党の児童売春への関与説を主張しております。

ピザはワシントンDCにあるピザレストラン「コメット・ピンポン」を表します。この店の経営者が民主党支援者である事実から派生し、当ピザ店では店内で児童売春のための子供が監禁されているという陰謀論がトランプ氏支持者の間で広まりました。Qアノンの出現以前には陰謀論を信じた者がこのコメット・ピンポンをライフル銃で襲撃する事件を起こしました。

そして五芒星は悪魔信仰の印であり、民主党が悪魔と契約を結んでいるという説を示しております。これは一神教キリスト教を信じるアメリカの、特に信仰心の強い保守層にはまごうなき「悪」の象徴です。

 

DSの沼に浮かぶ「メイン・ストリーム・メディア」の舟はアメリカのマスメディアがDSの味方をしてトランプ氏を攻撃しているというイメージを表しています。

 

この沼に生息するハゲタカのソロスは、経営の傾いた企業の株価を操作し労せずしてお金を稼ぐハゲタカファンドとして、ソロスを非難するというメッセージになっています。

 

沼に沈むゲイツIT産業がDSとズブズブであるというメッセージであり、同じく沈むFRBと国会議事堂はアメリカの金融システムや民主政治がDSの手に堕ちているという意味になっております。

 

沼に浮いているGoogleなどの文字はどれも国際的あるいはグローバルな組織であり、DSの影響が国際的な連帯にまで及んでいるということを表しております。

 

このDSの沼を臨み沼掃除に来たドナルド・トランプアメリカからDSの闇を取り除きに来たヒーローとして描かれます。手段を問わずアメリカの政・財・産業界から悪をまるごと根絶やしにしようとする、Qアノンにとってのトランプ氏のイメージが表れております。

 

ギャリソン氏のこの絵に込められているのは、正義のヒーロー・ドナルド・トランプとその敵で国家や社会に巣食う巨悪・ディープステートとその一味の姿と悪行、というギャリソン氏の視点から見た世界なのです。

 

 

【ギャリソンの風刺画の感想】

 

 

このギャリソン氏のイラストは分かりやすく、Qアノンの視点からみた世界像が一目で理解できるようになっています。

 

政治的な言説というのは何物も前提条件が不可欠であり、それが政治的な論争を困難にしているところがあります。ですが、それを一目で理解できるように表されるのが風刺画というものです。

 

その切り取り方は様々ですが、ギャリソン氏の風刺画はQアノンの考えを一纏めで表現しその複雑なバックグラウンドを一目で理解できるようにした点で面白い貴重な作品であると考えております。

 

そのQアノンの世界観ですが、とにかく敵のディープステート側の構図が複雑で広範に渡っていることが分かります。民主党の党員のほか官僚、国会、中央銀行、外交部門、金融市場、メディア、グローバル企業、IT産業、新型コロナワクチン、国際組織・・・。

 

少なくともQアノンの人々にとっての脅威や不安の対象の代名詞としてディープステートが名指しされていることが分かります。それに対してその脅威に立ち向かうヒーローとして、脅威への反逆の代名詞として出現したのがトランプ氏なのです。

 

私はもしもトランプ氏が政界に進出しなかったらQアノンは結託することはなかったのかもしれないと思う一方で、Qアノンの出現は社会病理の必然でその方便が偶然トランプ氏だったのかもしれないとも思いました。

 

このギャリソン氏の風刺画はQアノンやトランプ氏支持者にとっての救世主物語を描いているものです。

 

これをただの作り話とするか世界の真実かと捉えるかは人それぞれだと思います。

政争というのはヒーローによって打ち倒して幸せがもたらされるような簡単なものではなく、国民の利害関係が複雑に絡んでおりそれを探らなくては勝利することが出来ないのです。

一方で政治というのは合理性のみで動くものではなく時には熱い理想が効果を生み出すこともあるのです。熱い理想に邁進しそれがどうしようもない事態を打破することもあるのです。

 

ただ、やはり政治には結果が付き物なので、結果にどう向き合ってどう先に進むかが重要になるというのが私の本心です。

 

 

【おしまいに】

 


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(別のベン・ギャリソン氏の風刺画)

 

この記事はQアノンの事を揶揄するものではありません。Qアノンの事を正しく理解するための物として紹介しました。

 

何事も知らないよりも知っていることが重要です。知ったかぶりして何かを語ることは弁解しがたい罪です。

 

特にQアノンの思想について知識としては知っていても直感レベルで理解できているか否かは確認しがたい事案です。ですがこのギャリソン氏の風刺画を通して、Qアノン自身による直感的なイメージを共有する試みはその壁を多少なり溶かす行為です。

 

もちろんこの行為に意味がないと考える人もいるでしょうしそれを私は否定しません。ただ私はよく人を知らない癖に他人を断罪するのが好きではないので(というよりトラウマがあるので)、知識を深めた上でQアノンに対する見方を定めたいと思ったのです。

 

ちなみにギャリソン氏の風刺画はほかにも沢山ございますので、興味のある方は「ベン・ギャリソン」「Ben Garrison」で検索していただければそれらをご覧になることができます。

 

それでは最後までありがとうございました。

 

2021年9月3日